テンション・ノート(仮)


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蜂の巣

1997年

の後、呼び鈴が鳴ったので玄関を開けると隣のお風呂屋さんの奥さんが立っていた。「あんたン家のベランダ蜂が巣ゥ作ってるわよっ!」 見ると庇の下に直径5センチ程の褐色の塊があって大きめの蜂がまわりを、ぶんぶん、と飛び回っていた。とりあえず奥さんにお礼を言って、しばらく様子を見ることにした。(刺激をしなければ襲ってくることもないだろうし、すぐ大きくなるものでもないだろう)と高をくくっていたのだ。ところが巣はまたたく間に大きくなった。3日で15センチ位になり、蜂の数もうんと増えた。耳障りな羽音もだんだん大きくなる。びっくりした僕は近所の迷惑にもなりかねないと思い、あわてて保健所に電話を入れたのだった。青く澄んだ空が高い、変に静かな午後だった。駆除してもらったその日の夕方、僕は近くにある図書館の子供の本のフロアに行ってミツバチの図鑑を開いて見た。そこには例の『尻振りダンス』や『巣穴のかたちが六角形になる不思議』について書かれ、真ん中のページの見開き全部が『蜜でいっぱいになった蜂の巣』の写真だった。その写真からは、さっきまでベランダにあったあの巣の持つ胸の奥にひっかかるような不安感や違和感は伝わってこなかった。むしろそれは魅力的にさえ見えた。帰る道すがら、あの巣を駆除したことを惜しいことをしてし